ソルティノレシオ(Sortino Ratio)は、投資やトレーディング戦略のリスク調整後リターンを測定する指標です。
シャープレシオに似ていますが、ソルティノレシオは下方リスク(下落の変動性)のみを考慮する点で異なります。
基本概念
ソルティノレシオは以下の式で計算されます:
ソルティノレシオ = (平均リターン - 最小許容リターン) / 下方偏差
ここで:
- 平均リターン:戦略の平均収益率
- 最小許容リターン(MAR):投資家が許容できる最低リターン(多くの場合0%や無リスク金利が使用される)
- 下方偏差:最小許容リターンを下回るリターンのみを考慮した標準偏差
ソルティノレシオの特徴
シャープレシオとの違い
- シャープレシオ:すべての変動(上方と下方の両方)をリスクとして捉え、標準偏差全体を使用
- ソルティノレシオ:下方への変動のみをリスクとして捉え、下方偏差のみを使用
この違いにより、ソルティノレシオは「悪い変動性」のみをリスクとして評価します。投資家の多くは上方への変動(利益の増加)を「リスク」とは考えないため、ソルティノレシオはより直感的な指標と言えます。
解釈方法
ソルティノレシオの値は以下のように解釈できます:
- 高いソルティノレシオ:下方リスクに対して良好なリターンを生み出している
- 低いソルティノレシオ:下方リスクに対してリターンが不十分
一般的には:
- 2以上:非常に良好
- 1~2:良好
- 0~1:許容範囲
- 0未満:リスクに見合ったリターンが得られていないソルティノレシオの利点
- より適切なリスク評価:投資家が真に懸念するリスク(損失リスク)のみを考慮
- 非対称リターン分布への適合:リターン分布が正規分布ではない(多くの投資戦略がそうである)場合に、より的確にリスク調整後リターンを評価
- ドローダウン評価:大きな下落(ドローダウン)を伴う戦略を識別しやすい
ソルティノレシオの活用方法
- 戦略比較:異なるトレード戦略やポートフォリオを比較する際の客観的指標
- リスク管理:許容できるリスクレベルを設定し、それに対するリターンを評価
- パフォーマンス評価:トレーダーやファンドマネージャーのパフォーマンスを評価する際の指標
- 戦略最適化:バックテストでパラメータや手法を調整する際の評価基準
まとめ
ソルティノレシオは、下方リスク(損失リスク)のみを考慮したリスク調整後リターンの指標です。これにより、投資家やトレーダーは自分のリスク許容度に合わせて戦略を評価し、最適化することができます。シャープレシオと併用することで、戦略のリスク特性をより包括的に理解することができるでしょう。
トレードシステムのバックテストでは、期待値、オプティマルF、トレード間の独立性(Zスコア)と共に、ソルティノレシオを評価することで、より堅牢で長期的に持続可能な戦略を構築するための洞察を得ることができます。