期待値(Expected Value)は、トレーディングにおいて非常に重要な概念です。これはトレード戦略の長期的な収益性を予測するための指標です。
期待値の基本概念と計算式
期待値とは、1回のトレードで「平均的に」どれだけの利益または損失が期待できるかを示す数値です。数学的には以下のように定義されます:
期待値 = (勝率 × 平均利益) - (負け率 × 平均損失)
または:
期待値 = 勝率 × 平均利益 - (1 - 勝率) × 平均損失
期待値の意味
- 正の期待値:長期的には利益が期待できるトレード戦略
- 負の期待値:長期的には損失が期待されるトレード戦略
- ゼロの期待値:長期的には収支がトントンになると期待されるトレード戦略
期待値の重要性
- 長期的な収益性の指標:短期的な結果はランダム性の影響を受けますが、長期的には期待値に収束する傾向があります
- 戦略評価の基準:異なるトレード戦略を比較する際の客観的な基準となります
- リスク管理との関連:正の期待値があっても、適切なリスク管理(ポジションサイジングやオプティマルF)がなければ破産リスクがあります
具体例
例えば、あるトレード戦略が以下の特性を持つとします:
- 勝率:40%
- 平均利益:5%
- 平均損失:2%
この場合の期待値は:
期待値 = 0.4 × 5% - 0.6 × 2% = 2% - 1.2% = 0.8%
つまり、1回のトレードごとに平均0.8%の利益が期待できます。
R倍数(R-Multiple)による期待値
トレーダーの間では、期待値をリスク単位(R)で表現することも一般的です:
R倍数の期待値 = (勝率 × 平均R倍数の利益) - (負け率 × 平均R倍数の損失)
ここで、1Rは1回のトレードでリスクする金額です。例えば、1R = 2%(口座の2%をリスクする)の場合:
- 2R利益 = 口座の4%の利益
- 0.5R損失 = 口座の1%の損失
期待値を高めるための方法
- 勝率の向上:トレードシグナルの精度を高める
- リスク・リターン比の改善:利益確定位置を遠く、損切り位置を近くする
- 損失の最小化:早めの損切りや、損失トレードの規模を小さくする
- 利益の最大化:トレンドに乗り、利益を伸ばす戦略を採用する
まとめ
期待値はトレード戦略の「質」を評価する上で最も重要な指標の一つです。正の期待値を持つ戦略を見つけ、それを一貫して実行することが長期的な成功の鍵となります。また、期待値だけでなく、それをどのように資金管理(オプティマルFなど)と組み合わせるかも重要です。トレードの回数が増えるほど、実際の結果は理論上の期待値に近づく傾向があります。